―「北鎌倉発 ナショナル・トラストの風」は多くのメディアで紹介されました。
                 掲載された書評に一部を紹介します。―

「共同通信社・文化部」
◎住民が自然を買い取る
 ナショナル・トラストとは、住民の寄付を募って貴重な自然を買い取り、保護、管 理していくこと。自宅近くの神奈川県北鎌倉周辺の緑地が大規模な宅地開発の対象に なっていると知った著者は、トラスト団体の設立を決意した。
 バブル崩壊後で企業の賛同を得るのが難しく、活動資金は容易に集まらない。が、 まず機関誌を発刊し、地道に活動の趣旨を浸透させていく。日本各地で活動している 他のトラスト団体とも連絡を取った。
 北鎌倉に生きる人々の熱意と協力が、活動を徐々に進展させていく。

「神奈川新聞社」
 まとまった緑が残されている北鎌倉でも、「里山」と呼べる場所はわずかしかな い。水辺、草原、森の三つがそろって初めて、「里山」と言えるだけの生態系と多様 な 生き物を維持できるのだ。
 そんな北鎌倉で数少ない自然を保持している台峯地区に、宅地計画が浮上して久しい。ジャーナリストの著者は、自宅付近で持ち上がった別の宅地開発計画に対応する ための知恵を求めて、台峯保全を求める団体を訪ねたが、逆に協力を求められてしまった。
 広く薄く募った寄付金を基に、住民自ら土地を管理し、公開しようとするナショナ ル ・トラスト方式による台峯保全の模索。「分散型市民運動」の新しいモデルとして注 目すべきこの運動の在り方を、現場から報告する。

「鎌倉朝日」(朝日新聞の姉妹版)
「ナショナル・トラストの風」出版
 北鎌倉の緑地保全運動の叫び描く
 北鎌倉の台峯緑地の保全をめぐる市民運動とのかかわりを描いた本が出版された。 表題は「北鎌倉発 ナショナル・トラストの風」。わきに「分散型市民運動の時代が やって来た!」の副題が付けられている。
 書いたのは鎌倉市高野の共同通信社記者野口稔さん。題名のナショナル・トラスト は国民から寄せられる資金で、地方公共団体や民間団体が、良好な自然や歴史的な環 境を持つ土地を取得して保護・管理し、環境を守っていこうというもので、国民環境 基金ともいう。
 98年11月、野口さんは「なだ いなだと北鎌倉周辺をあるく」に参加した。これは 台峯緑地をナショナル・トラストの手法で、保全するために発足した「北鎌倉の景観 を後世に伝える基金」の企画の一つで、代表のなださんは作家と精神科医の顔を持 つ。
 なださんとの出会いをきっかけに自然の大切さを肌で知り、住民運動にのめり込ん でいく。規約作りから携わり、広報担当として運動拡大のための機関誌の創刊などに 取り組む。
 基金を増やすため北鎌倉の湧水を使った地ビール開発への協力、町おこしの「匠の 市」なども開く。こうして知り合った作家藤沢周、詩人城戸朱理さんら多くの人との 触れ合いを歯切れのよい文章で描いている。
 「北鎌倉というごく限られた場所で、私の地域との関わりは始まった。ちっぽけな 体験ではあるが、志を同じくする人たちに、一陣の風となって届けたい」とあとがき に書いている。

「きたかまくらぶ」(住む人、来る人―北鎌倉を愛する人々の交流誌)
きたかまくら の たから探し
 北鎌倉まちづくり協議会の中年男性会員には、少年の面影を残した人が多い。一度 そう思いつくと、あの人もそうだ、この人もそうだ、と次々に人の顔が浮かんでくる 。
 少年がしたがることは何か。探検である。宝探しである。「きたかまくら」には 「たか」「ら」が潜んでいる。豊かな自然と長い歴史の中で蓄積された文化を持つ北 鎌倉は宝探しにはうってつけの場所だ。
 宝探しに情熱を傾ける「少年」の一人、野口稔さんは共同通信の記者として、時代 の動きを象徴する事件や人を30年にわたって追い続けてきた。獲物を狙う鷹の目を 持ったこの「少年」は、6年前から北鎌倉に住むようになり、自然を守る運動に参加 し たのを境に大きく人生が変わったと語る。
 「きたかまくら」には「たか」が潜んでいる。
 大船方面から北鎌倉に近づくJR横須賀線の電車の右手の窓に見えてくる台峯緑地 は、絶滅が危惧されるオオタカ、ハイタカのえさ場となっているという。野口さんの 近著「北鎌倉発 ナショナル・トラストの風」の第一章のタイトルは「オオタカ飛 翔」。「分散型市民運動」を提唱するこの書を、北鎌倉の宝探しのガイドブックとし ても推薦したい。

「Kyodo Weekly」(株式会社・共同通信社発行の週刊情報誌)
市民が拓く「市民との共生」
 鎌倉にはこれまで、何度も足を運んだ。東京駅からJRに小一時間も乗れば、そこ が鎌倉。頼朝の時代から八百年も続く古都のたたずまいが「旅人」を迎えてくれる。
 数々の名刹、鶴岡八幡宮から由比ヶ浜、大仏へ続く周回が古都めぐりの定番だが、 その都度、新鮮なのは周囲を囲む樹々の緑が家並みと調和、四季それぞれの趣を演出 してくれているからだ。大河ドラマ「時宗」人気で、今、鎌倉に改めて関心が集まっ て いる。
 とはいえ、そんな鎌倉も、都市化の波・開発と無縁ではあり得ない。すでに、マン ションが並ぶ市の北部一帯は往時の面影はない。そればかりか、古都の玄関口ともい うべき北鎌倉界隈も近年、宅地開発攻勢にさらされてきた。谷戸池と樹林が一体と なって作り出す北鎌倉の景観は地域住民だけの、というよりは日本の共有財産。98年 11月に、「北鎌倉の景観を後世に伝える基金」(略称・北鎌倉台峯トラスト)が立ち 上がった。宅地開発されそうな緑地を買い取って、保全を図ろうというこの運動は、 「開発」との宿命的な「戦い」。戦いは現在も進行中だ。
 本書は北鎌倉から吹いたナショナル・トラストの風の三年間の歩みの記録だ。立ち 上げに至る準備と意見調整、業者や行政との交渉、存在をアピールする広報活動、協 賛 者を獲得するための苦心のエピソードなど、門外漢にはすべてが新鮮だった。
 白状すると、今回、本書を取り上げたのも、カバーにあるハイタカの勇姿写真に魅 せられたのがきっかけだ。トラスト音痴の身を恥じるばかりだが、救いは、著者の野 口さん自身が三年前までは「自宅と職場を往復するだけの」トラスト無縁の「根無し 草」だったと、告白していいることだ。
 野口さんは現役の新聞記者。仕事の合間を縫ってトラスト立ち上げに奮闘した。 「仕事人間もいい加減にしてはどうか。自分たちの街をよくしたいなら、自分で汗を かいてみようではないか」―著者のそんな声が伝わってくるようだ。
 本書で目に止まったのは、各界で活躍している人々と著者の「交友録」だ。
 自然と向き合う企業人の言葉はそれぞれに「生きる極意」を語っていて聞かせる が、一つだけ例を挙げれば、常磐文克・花王特別顧問(九五年当時社長)の経営哲学 。
「自然との共生だ。企業といえども生き物だ。大自然の中で生きるには、自然のルー ルに従わなければ滅びてしまう」。「自然が教師であり、教科書」とした常磐氏は主 力商品の洗剤で環境にやさしい商品を開発、ヒットさせたという。経営効率と環境へ の配慮を考える点で示唆に富んだ話だ。
 貴重な自然や歴史的環境を住民が寄付を募って買い取ったり、地権者に寄付しても らったりして、保護、管理、公開するのがナショナル・トラスト。日本の第一号は三 十 七年前。今では「ナショナル・トラスト協会」に所属するトラストだけで全国に五 十、一万四千余人、保護面積は三千ヘクタールに上る。
 しかし、トラスト先進国の英国は、その歴史は百年余。参加人員二百五十六万人、 保護管理面積は二十七万ヘクタールに達する。自然に対する彼我のさ数字以上に深く 、 大きい。二十一世紀、日本も腰をすえて自然との共生を考える時を迎えている。(俊 )

地球の自然環境と人間の関係を扱った一冊(プラスワンニュース)
 緑に恵まれた住宅環境のよい鎌倉に住みたい、と思っている人は多い。社会科学で はマーケットがあるという。市場がほぼ確実であれば、資本主義の原理に従って資本 が投下される。つまり住宅開発が計画される。
 住宅開発によって北鎌倉の自然は当然減少する。平安の昔から集落が大集落に開発 が進めば、自然がなくなるのは当り前であった。鎌倉幕府成立前と後のこの地の自然 環境にも同じことが言える。
 産業革命が世界の先進諸国と呼ばれる国々に定着し始めた頃から、住みやすい環境 についての市民意識が芽生え始めた。そして、二〇世紀になって市民運動として動き 始めた。
 その一つの運動が緑地を市民の浄財で買い上げるナショナル・トラスト運動である 。 この本は北鎌倉の緑地保全運動にかかわることになった共同通信記者が、個人意識の 自立への成長を捉えながら、客観的に書かれた本である。地球に生きる生き物の一つ としての個人が、ナショナル・トラストの意識を再認識していくプロセスを刻銘に追 って綴った内容である。

ガバナンス 11(21世紀の地方自治を創る総合情報誌)
 ジャーナリストである著者たちは、北鎌倉で里山保全のトラスト運動を立ち上げる が、その理念は特定の政治団体などに依拠しない、自立した市民による分散型市民運 動である。共通の目的のためにさまざまな人と関わることでネットワークは広がり、 地域には輝く個性がいかに多いことかと気づかされる。「自然を守り、人を愛するこ とがいかに同義であるか。緑地保全運動を超えて、本書は人としての自立に関わる重 要な思想を教えてくれる」と作家・藤沢周氏も激賞する数珠の一編。

サラリーマンスタイルドット・コム(サラリーマン向けWebサイト)
 本書は北鎌倉の宅地開発されそうな緑地を買い取って、保全を図ろうというナショナル・ト ラスト活動の三年間の記録であるとともに、この運動に参加した1人のサラ リーマンが市民運動にかかわっていくことで、自然を慈しみ、地域に根ざした市民としての自分を発見して いく記録とも言える本です。
 著者は現役の新聞記者。
 立ち上げに至る準備と意見調整、業者や行政との交渉、存在をアピ ールする広報活動、協賛者を獲得するための苦心のエピソードなどが、第三者的なおさえた タッチで綴られています。
 NPO法人を立ち上げようとする人や市民運動に関わる人、地域起こしを考える人には良い意味でのハウツー本になるはず。
 インターネットに出会った衝撃から、市民運動の新しい形を発想するところなど、旧来の市民 運動家たちにはない新鮮な感覚で、ネットを活用する私たちには受け入れやすく、このような人たちとなら、等身大で市民運動にかかわることができそうな気にさせてくれます。
 後半は、ベテラン経済記者である著者が出会った経営者たちの「自然の摂理に学ぶ経営哲学」が 紹介されています。 常葉文克・花王特別顧問、高木禮二・明光紹介社長、佐野力・日本オラク ル取 締役(前会長)など、ビジネスマンとしてばかりでなく、バランス感覚のある市民として も一流 の方々の姿勢は、肩ひじ張ったところがなくニュートラルで、お手本にしたい。
 おっかなびっくりではあるが、地域と関わってみたいとおもっているサラリーマンのみなさん には、手引書であり、支えにもなりそうな本です。
おすすめ度は、 ★★★★★+すがすがしい風
■ <読んで欲しい方>
  自分は、会社人間と思っている人
  妻や子どもとコミュニケーションを図りたい人
  新しい生き方を模索するサラリーマン
  硬直した組織の市民運動家
  


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