特   集


    目指すは「現代版寺子屋」復活!
              ―建長寺、禅研究会に市民の参加呼びかけ―


 昨年末の団塊サミットが成功裏に終わった大きな理由に、開催場所が建長寺だったことを否定する人はいないだろう。建長寺で開催できたのは、ひとえに高井正俊宗務総長のお陰である。北鎌倉「新参者」の私と、建長寺NO2の高井宗務総長は、さほど面識があるわけでもなかった。手短に趣旨を説明しお願いした。答えも一言。「私に任せなさい」
高井宗務総長は、団塊サミット冒頭の「法話・お経」、最後の「早朝坐禅」まで、自ら担当された。交流会では、「炎は命だぞ」といいながら、陣頭指揮でつくられた「けんちん汁」を振舞っていただいた。参加者全員が感激した。美味しかっただけでなく、その「姿」に、ありがたいと思ったからだ。

▽精神の拠り所がほしい
団塊サミットの会場を建長寺にお願いした理由を明らかにしておきたい。北鎌倉の街並みには、遠い昔の記憶に触れた時に感じるある種の懐かしさがある。最近、この懐かしさは、現代およびこれからの日本にとって大切なものであり、それが禅の世界に由来しているのではないかと考えるようになった。
間もなく「住み慣れた」会社という組織から、否応なしに離れ、「個」に帰る。最早、生き方の「テクニック」を学ぶ年齢ではない。精神の拠り所がほしい。団塊サミットを北鎌倉の禅寺で開こうと思った理由は、ここにあった。
*現代に生きる禅の精神シリーズ
http://www.kitakama-yusui.net/tokusyu/tokusyu.html

▽昨年から「鎌倉禅研究会」をスタート
江戸時代、寺子屋は庶民が「読み・書き・そろばん」を習う教育の場だった。高井宗務総長はどうやら、お寺が開かれたお寺、つまり「現代版寺子屋」であるべきだと考えておられるようだ。高井宗務総長は昨年から、自ら主催して、団塊サミットのシンポジウムの開催会場となった「応供堂」で、「鎌倉禅研究会」をスタートさせた。
研究会は原則として月一回のペースで開かれている。中身は「大覚禅師(建長寺開山・蘭渓道隆)語録を読む会」、「建長寺編纂史料集を読む」、「鎌倉禅に造詣の深い特別講師による研究発表」の3本立て。高井宗務総長は「この会は僧侶、社会人、学生と、できるだけ多くの方々の聴講、参加を願うものです」と、市民に参加を呼びかけている。会費は無料だが、資料代の代わりに拝観料300円が必要だ。

■「鎌倉禅研究会」の4月以降の日程
▽時間 午後1時〜午後4時半
▽建長寺応供堂
 @「大覚禅師(建長寺開山・蘭渓道隆)語録を読む会」(小島たい山師、毎回)
 A「建長寺編纂史料集を読む」(小松寿治氏 毎回)

第12回 4月21日(木) 鎌倉禅と考古学
              鎌倉国宝館前副館長 松尾宣方先生
第13回 5月19日(木) 彫刻に表れた鎌倉禅
              東京国立博物館 浅見龍介先生
第14回 6月2日(木)  大覚派の展開―西国を中心に―
              彦根市智教寺 佐々木陵西氏
*7月はお休み。9月以降については、建長寺・0467-22-0981へ問い合わせてください。

▽「このままでは仏教が滅びる」
 高井宗務総長は団塊世代より、ちょっぴり年上の1946年生まれ。55年建長寺派の宗禅寺(東京都羽村市)で得度、60年鎌倉建長寺の昭和・平成時代を代表する高僧の湊素堂老師に就き禅修行。現在、宗禅寺の住職もされている。宗禅寺でも子供坐禅会、大人坐禅会、朝粥坐禅会、写経の会などを積極的に開催、禅の普及に力を注いでおられる。この他、「昔の寺や神社は、人が集まる場所だった。宗禅寺をそんな場所にしたい」との思いから、檀家と地元密着型の祭りや、文化展なども開かれている。
相当厳しい修行を積まれたようである。「底が深い」。私が高井宗務総長から最初に受けた印象だった。現在でもそれは変わらない。「鎌倉禅研究会」には、得るものが多いので、できるだけ参加するようにしている。「このままでは仏教が滅びる」。ある時、普段は泰然とされている高井宗務総長が少し、声を荒げられた。「鎌倉禅研究会」への建長寺の塔頭のお坊さんの姿が、あまりに少なかったからだ。これからも高井宗務総長の指導を仰ぎたいと思う。
▽ 禅文化の普及に積極的な建長寺
建長寺は巨福山建長興国禅寺といい、鎌倉五山第一位とされる臨済宗建長寺派寺院の総本山だ。今から約750年前の建長5年(1253)、北条時頼が宋から禅宗の高僧、蘭渓道隆を招き、日本最初の本格的禅宗道場として創建した。本尊は木造地像菩薩坐像。仏殿の前にある樹齢約750年、幹回り7メートルもあるビャクシンの古木が寺の歴史を感じさせる。なじみ深い「けんちん汁」は建長寺がルーツ。「建長汁」がなまって、いつしかよばれるようになったという。「鎌倉禅研究会」以外に、坐禅会、土曜法話、土曜朗読会など近年、禅文化の普及に積極的だ。
 交通: JR東海道線大船駅乗り換え、JR横須賀線北鎌倉駅より鎌倉駅方面に向かって徒歩15分。またはJR横須賀線鎌倉駅より北鎌倉に向かって徒歩15分。
*建長寺HP http://www.kenchoji.com/

高井正俊宗務総長
「鎌倉禅研究会」の看板

土曜朗読会のポスター
 

 
 
 

 

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