北鎌倉・六国見山に巨大な特別養護老人ホームを建設しようとする計画が明らかになった。建設予定地は通称「ゴンベイ山」と呼ばれ、5階建てマンション建設計画が進行している小泉家のかっての所有地。既に宅地開発工事が終了、宅地販売中の六国見山麓の「台の杜」と、宅地開発工事が最終局面に入った六国見山中腹の長窪地区の中間に位置する緑地だ。六国見山と台峯緑地で構成されている「鎌倉の緑の玄関口」は、この巨大特養施設建設が、現実化すると“片肺飛行”を余儀なくされ、多くの人々に親しまれてきた北鎌倉の景観は決定的なダメージを受けることになる。
▽全長200メートル、4階建て、150床前後
巨大特養施設の事業者は、藤沢市に本社を置く(株)新都市建設で、同社はこのほど高野台自治会に実質的な事前説明の形で、「(仮称)北鎌倉高野特別養護老人ホーム計画」の設計図面を提示した。それによると1万3400平方メートルの敷地に、1万1300平方メートルの大規模な特別養護老人ホーム(全長約200メートル、実質4階建て、150床前後)を建設する内容になっている。建設予定地では既に測量が始まっている。
▽高野台自治会は建設阻止の構え
提示を受けた高野台自治会は、自治会長と工事予定地の近隣住民の連名で、会員に計画の概要と問題点を指摘した文書を配付した。文書では「今回の開発は、これまでの一連の開発で見られた自然破壊、騒音、粉塵、振動、交通妨害だけでなく次の相違点と大いなる危機があります。1・巨大施設 2・建設後の地域環境の悪化 3・開発の連鎖 また、建設後に考えられる住環境の悪化は、日照の減少、プライバシーの侵害、狭隘な道路に集中する混雑、騒音の他、施設特有の問題等、さまざまな問題が予想されます。これほどまでに開発が矢継ぎ早に出てくるのは、明らかに便乗開発であり、住民側も感覚が麻痺しているのが実態です」と問題点を整理、建設反対の署名運動や鎌倉市への要望書提出などを呼び掛けている。
▽長窪地区の宅地開発現場が丸見えに
この巨大特養施設建設計画が、このまま進行すると北鎌倉の景観は、がたたになってしまう。まず、大船方面からの景観。現在、六国見山は麓の「台の杜」(大本組の宅地開発工事で、宅地化され、森は現実には存在しない!)、巨大特養施設建設予定地の通称「ゴンベイ山」、長窪地区の宅地開発現場、山頂に至るまでの森に区分される。「ゴンベイ山」の緑が、長窪地区の宅地開発現場を隠す格好になり、景観上、なんとかバランスをとっている。しかし、この緑地を削ってしまうと、長窪地区の宅地開発現場が丸見えになってしまう。
一方の横須賀線沿い景観も悲惨なことになる。北鎌倉の街のシンボル的な存在だった小泉邸の洋館が消え、ここに5階建てのマンションが建設される予定になっている。これだけでも街並みとの調和が難しいのに、さらにこのマンションの上方の緑地に4階建ての巨大特養施設が建設される―。
▽大本組が解いた開発の封印
巨大特養施設建設計画について鎌倉市に事実関係を確認をした。すると「新都市建設から特養施設を建設したいとの意向は聞いたことがある。しかし、具体的な計画に基づいた事前相談は受けていないので、コメントはできない。建設予定地とされる場所が、風致地区でかつ第一種低層住居専用地域で、容積率、高さ制限があるとは承知している。ただ、法律や市の指導をクリアした計画なら認めざるを得ない」(土地調整課)との回答があった。
建設計画は実現に向けて確実に動いている。北鎌倉の自然環境と景観の重大な危機が迫っている。北鎌倉一帯には六国見山を水源にした自噴井戸が200くらいある。水源の森を崩す巨大特養施設の建設は、こうした自噴井戸にもなんらかの悪影響を与えることになるだろう。「これほどまでに開発が矢継ぎ早に出てくるのは、明らかに便乗開発」と高野台の自治会が指摘しているように、六国見山の一連の開発は、台の杜を宅地開発した大本組が「火付け役」となった。
同社は長窪地区の宅地造成工事も請け負っている。企業だから、利益を追求するのは当然の行為である。しかし、企業も社会の構成員であるということも忘れてはならない。企業の社会的な責任という見地から、開発の封印を解いた同社の行為を検証してみる必要があると思う。
【参考】
小津安二郎は眠れない
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/2/0261/1.html
姿見せた中世の大規模遺跡
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/2/2.html
災害時に飲料水としての利用が不可能に!
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/2/2003/209.html
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