◎マイキャッスル北鎌倉・第2案に対する抗議文
―15メートル以下、4階建て以下をあらためて要望―
山田建設株式会社殿
2003.6.21
北鎌倉まちづくり協議会
代表幹事 坂田庄次
マンション問題部会長 斎藤博子
5月26日、マイキャッスル建設計画の第2案を受け取りましたが、当協議会の要望が全く無視されており、失望のあまり声も出ません。地域住民の意向に耳を傾けようとしない貴社の対応に強く抗議すると同時に、マンション建設にあたっては景観に配慮し、15メートル以下、かつ4階建て以下とすることあらためて要望します。
▽期待裏切る第2案
第2案は6階建の第1案に替わるものとして期待しておりました。しかし、受け取ったのは平面図のみで、計画概要書も立面図もありませんでした。容積確保、戸数確保に終始した計画で、第1案と基本的には変化が見られませんでした。
昨秋9月、貴社及びDAN設計のほうから当協議会に対し、マンション建設についての意見を聞きたいというアプローチがありました。これに対し私たちは、デベロッパーと地元住民が対立の構図でなく、双方が知恵を出し合えば将来のまちづくりに寄与するものが出来るのではないかと期待し、この申し出に応じました。
しかしながら、この期待は見事に裏切られたようです。私たち協議会は北鎌倉に居住するものとして、また北鎌倉を愛するものとして将来的展望のもとに景観の問題を主軸に幾つかの要望を出したのですが、それに対して「良く理解しそのように致します」と鸚鵡返しの答えが返ってきました。
ところが、計画案にはその回答の内容がまったく反映されておりません。第1案は1月18日頃に近隣約20軒に配布されました。図面化されたものを見て私たちの期待は無残にも打ち砕かれた思いが致しました。
▽定例会では環境への配慮を明言
近隣への配布をもって計画が公開されたと判断し、私たちはこの問題を広く世に問うべくプレスリリースを行ない、新聞数紙がこれを取り上げてくれました。引き続いて3月15日の定例会に山田建設及び設計者のDAN設計においで願い、趣旨説明を聞くと共に、6階建てであることや、それまで協議会と話し合ってきた環境に対しての考慮が何もなされていない、ということで強く批判を致しました。そしてその日感想文をサマリーとして提出されるよう要望致しました。
その後貴社から第1案を自主的に全面撤回すると意思表明されたのは3月28日のことです。その折、青柳近隣対策室長は「6階建ての案を出して申し訳なかった。環境に対する配慮はおっしゃる通り不足しており、デザインに関してもポリシーがないと言われることは良くわかります。
また、コの字型配置がロの字型になっていたことに関しては、もし私が逆の立場であったなら当然怒るでしょうね。今後は北鎌倉の環境を良く考え、採算点ぎりぎりでも良いものを創るように致します」と明言されました。
▽地下水脈にも影響を与えかねない第2案
第2案は私たちの4階建ての要望に対して5階建て、当初50戸といっていた戸数が62戸、コの字型配置と言われたものが相変わらずのロの字型、現状保存を希望した白モクレンは狭い空間に押し込まれ見るも無残、駐車場の建物内確保は徒に建物ボリュウムを増大させると共に地下工事は膨大な土量を排出し、また湧水の里といわれる北鎌倉の地下水脈にも影響を与えかねないものであります。
また第1案では4mあった歩道(まちづくり空地)が2mになり、ごんべい踏切に通ずる市道により近接したことは、近隣への日照被害をより増大させます。問題点は枚挙に暇がありませんが、最初から申し上げているように計画に景観及び建物意匠にデザインコンセプトが欠落していることは致命的です。
▽同意できないデザインコンセプト
当初から10数回を数える打合せのなかで、私たちの申し上げることが抽象的で理解できないからもっと具体的に言ってくれということが何度かありました。具体性を帯びるということはこちらの概念の押し付けになりかねず避けていたのですが、イメージスッケチや最終的には計画案まで坂田試案(私案)として5月10日の協議会においてお渡ししました。
この第2案を以って鎌倉市と事前相談に入るということですが、環境問題やデザインコンセプトに対する対応において、全く同意できません。見切り発車するというなら、今まで協議を重ねてきたことがどのような意味合いを持つものであったのか大いに疑問が残ります。
ごく最近、売主・山田建設、設計・DAN設計のミオカステーロ鎌倉大船と銘打った常楽寺信号近くのマンションの折込広告が毎週のように入ります。
そのチラシのキャッチコピーに“憧憬の北鎌倉を背景に―――哲学のあるマンション”とあります。今回のマイキャッスルも北鎌倉を売り物にするのであれば景観に対する配慮がなければ環境へのただ乗りであり、更には景観を破壊するものとして厳しく指弾されても仕方がありません。
▽景観権を認めた国立マンション訴訟
最近、マンション建設に伴う紛争が多発しております。国立の14階建マンション、名古屋の30メートルのマンション、軽井沢の2階建てマンション等で、前2例は住民の景観に対する意見が裁判において認められ、軽井沢の例は町長及び県知事が“景観を破壊する恐れがある”として建設中止を求めているものです。その他裁判に至らないものに関しては数え切れない紛争があり、いずれもマンション業者は合法であるということを錦の御旗に建設を強行しています。
しかし、法律はあくまでも最低限の基準であり、かつ現状の後追いです。その地域の住民、市民、ひいては国民がその地域に対しあるイメージを持ち景観にそぐわないとするときはその意見を無視して強行することは許されないことであると考えます。
国立マンション訴訟の場合でも東京地裁は「ある地域の住民らが相互理解と結束のもとに一定の自己規制を長期間続けた結果、独特の都市景観が形成され、広く一般社会からも良好な景観と認められて土地に付加価値が生まれている場合」には法的保護に値する「景観利益」が発生すると正面から認定しているのであります。
▽無指定地域はごくわずか
山ノ内(通称北鎌倉)の地域としての特性を都市計画「山ノ内風致地区・古都保存区域図」から概観してみます。町域のほとんどが歴史的風土保存地区、特別保存地区、風致地区、宅地造成工事規制区域に覆われており、無指定の地域は鎌倉街道とJRとに挟まれた帯状の部分にすぎないことが分かります。
山ノ内の町域面積は200.1ha,その内歴史的風土特別保存地区[6条地区]は106.9ha(53%),歴史的風土保存地区[4条地区]は39.7ha(19%),風致地区は第2種、第3種の合計で6.5ha(3%),宅地造成工事規制区域は32ha(16%),そして無指定地域はわずか6.5ha(3%)にしかすぎません。
鎌倉街道の大船側町域から駅までの両側に近隣商業地域、さらに同町域から建長寺にかけて帯状の第1種中高層住居専用地域が存在しますが、いずれも面的な広がりを持つものではありません。このように考えてきますと街道沿いの帯状をなす近隣商業地域、及び第1種中高層住居専用地域を除いては6条地区が社寺関連の施設以外は原則建築不可ですからほとんどの町域が建蔽率40%、容積率80%であり、建築物の高さでいうと4条、6条地区を包含した風致地区のほとんどが第2種風致地区で8メートル以下、街道沿いのごく一部が第3種風致地区で10メートル以下ということになります。
街道沿いの近隣商業地域、第一種中高層住居専用地域にあっては山ノ内を取り巻く山並み、又まち全体の家並みが構成する景観を考え、15メートル(都市計画審議会審査限界)以下、かつ4階建て以下とすべきであると考えます。
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