北鎌倉・旧小泉邸跡地のマンション建設問題で、山田建設からすべての権利を譲り
受けたマンション専業首位の大京は、12月12日夜、山ノ内公会堂で、近隣住民への第4回目の説明会を開催した。説明会には住民約30人が出席した。席上、大京は前回の説明会で示したマンション建設計画の修正案を提示した。修正案では焦点となっていた規模に関し「実質的な高さが15メートル、5階建て」となっている。
▽「マンションのグレードを下げた」
これはどの地点を基準にしても「15メートル以下、4階建て」という住民の強い要求に、高さの面では応じた格好。しかし、内容を分析すると、大きな疑問符が付く。前回の計画では鎌倉街道沿いは、4階建としていたのに今回は5階建てに変更。しかも戸数を63戸から65戸に増やしている。5階建てなのに、15メートルにできたのは、階高を低くしたためで、大京は「マンションのグレードを下げた」と説明した。
鎌倉街道沿いに5階建ての巨大マンションが出現することは、低層建築で統一され
た北鎌倉の街並み景観との調和を著しく欠くと同時に、道行く人々に圧迫感を与える
。このため、説明会に出席した住民全員が修正案に反対、4階建て以下とするよう強
く要求した。しかし、「4階建てでは採算が取れない。今週中にもこの修正案を鎌倉
市に提出する。形状・規模に関する住民説明会は今回が最後」と住民説明会の打ち切りを宣言、見切り発車で、5階建てマンションの建設を強行する方針を示した。
▽明白な信義違反
旧小泉邸跡地のマンション建設問題は、今年3月、山田建設が近隣住民に提示した「実質15メートル以下、4階建て」を柱とした修正案で決着が予想された。権利を譲り受けた大京もこの修正案を最大限尊重するとしていた。大京の今回の見切り発車は、明らかに信義違反である。
12月12日夜、大京が示した修正案「実質的な高さが15メートル、5階建て」に関しての、住民との質議は時間にしてわずか約1時間半。この件に関しての協議はスタートラインに立ったばかりだ。十分な協議が行われたとはいえない。
大京が16メートル、5階建て案を提示
−「信義違反」と協議会は修正を要求−
http://www.kitakama-yusui.net/tokusyu/13.html
▽「大京は汚い」
今回の説明会の2日前の12月10日、「大京のパンフレット、グリーンオアシス第2号2004秋に北鎌倉の恵みが載っているのが残念です。ちなみに私はこれをフジスーパー大船店で見ました。大京は汚いです。北鎌倉の住人」という内容のメールが寄せられた。
「北鎌倉の恵み」は北鎌倉の湧水を使った地ビールだ。北鎌倉湧水ネットワークは、「北鎌倉が変わらない街並みであり続けてほしい」という思いから「北鎌倉の恵み」の誕生に、企画を中心に、ボランティアで、さまざまな協力をした。
北鎌倉の恵み
http://www.kitakama-yusui.net/4/4.html
▽「安らぎの味と薫り」
さっそく、グリーンオアシス第2号2004秋を入手した。表紙には「真の健康を手に入れる 鎌倉・五感」という大きなタイトルが踊っていた。「北鎌倉の恵み」は「安らぎの味と薫り」という見出しで「北鎌倉・六国見山の豊かな自然に磨かれた涌き水で作られた地ビール。第2回地ビールコンテストで銀賞を獲得した逸品です」と紹介されていた。
「北鎌倉の恵み」を紹介しているページの文章が下記のようにふるっている。
あちらこちらに安らぎ“五感の里”鎌倉
鎌倉は、いわば“五感の里”。そこに暮らしているだけで五感が磨かれ、疲れた体を癒してくれます。たとえば、静寂に耳を傾けれてみれば、川のせせらぎや小動物の声など、癒しの“音”が聞こえてきます……『仕事で疲れて、帰ってくるならこの場所』と思うほど心身に栄養を与えてくれる街、鎌倉。健康的な暮らしは、ここから始るといっても言い過ぎではないでしょう。
▽呆れた企業体質
冗談にしてもきつすぎる。北鎌倉が「安らぎ“五感の里”」だから、「変わらない街並みであり続けてほしい」と思って、多くの市民の協力を得て、「北鎌倉の恵み」の誕生に一役買った。私は醸造元と次のような覚書を取り交わしている。「北鎌倉の恵み」のブランドに関しては権利を有している。その私に対し、事前に掲載に関する話はなかった。私の意図とはまったく正反対の使い方をしている、というのにだ。呆れた企業体質である。断じて許せない。
■「北鎌倉の恵み」地ビールに関する覚書■
「北鎌倉湧水ネットワーク」と「日本地ビール事業研究所」は、「北鎌倉の恵み」
ブランド名称の管理を、両者の協議によりなされることを約束した。また、「北鎌倉
の恵み」地ビール事業のさらなる発展のため、この地ビールの製造・販売の権利を
「横浜ビール」に委託することに合意し、「横浜ビール」はこれを受諾した。
これを受け、本日、次ぎの通り、覚書を取り交わした。
12日の説明会の席上、私は大京に抗議、文書による回答を求めた。大京は調査し、
回答することを約束した。
▽水に浮いている状態
北鎌倉湧水ネットワークの設立のコンセプトは「森は命の源! 北鎌倉を湧水の里に!」だ。北鎌倉は湧水が豊富で、約200箇所の井戸がある。生活用水や災害時の備えとして、街の重要な「財産」となっている。旧小泉邸には深さがそれぞれ8、5メートル、2、2メートル、2、7メートルの三つの井戸があった。
驚くほど水脈が浅い。言い換えれば地面のすぐ下から、水がこんこんと湧き出てくる。旧小泉邸はいわば「水に浮いているようなもの」で、地盤が極めて不安定だ。だから、周辺工事が始ってから、近隣では家屋が大きく揺れ、「船酔い状態になる時がある」(近隣住民)という。
▽心配な巨大マンションの安全性
近隣の住民の一人が「昔から井戸は扱いが難しい、といわれている。井戸を封鎖する場合は、息抜きや排水パイプを作るなど、慎重な対応が必要だ。しかし、旧小泉邸の三つの井戸は、息抜きや排水パイプを作らず埋められた可能性がある。その証拠に旧小泉邸の敷地から、周辺の道路に水が流れ出している。雨上がりの時が特にひどい。敷地内ではユンボーのキャタピラが、泥水につかって、身動き取れなくなり、ポンプで水を吸い上げていたのを目撃した」と証言している。
年明けには洋館の解体を含めた本格工事が始りそうだ。「水に浮いている状態」の軟弱な地盤の上での本格工事は、近隣に人工的なさらに「大きな揺れ」をもたらすことは必至だ。何よりも心配なのは軟弱な地盤の上に建てられた巨大マンションの安全性だ。もし、規模の大きな地震が襲った時、大京はマンションの住民にどこまで安全を保証できるのだろうか。工事に伴う周辺の井戸への悪影響も懸念される。
前回の特集で書いた「大京が16メートル、5階建て案を提示−「信義違反」と協議会は修正を要求−」の結びの言葉を再掲する。
「大京は企業利益追求のために、かけがえのない市民の共有財産を破壊している当事者であるとの自覚と、企業も個人同様、社会の構成員であるという認識を持つべきだろう。大京が住民の声に真摯に耳を傾け、北鎌倉の景観と整合性を持った修正案を提示することを期待したい」
(了)