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 ◇侘助(わびすけ) ―「北鎌倉の風」が生まれた場所(喫茶店兼酒房)

 JR北鎌倉駅は素朴ではあるが、ホームに降り立つだけで、古都北鎌倉を実感させてくれる味のある駅である。関東の駅100選にも選ばれている。そのJR北鎌倉駅南口から歩いてすぐの鎌倉街道沿いにある。北鎌倉の飲食店は観光客相手のため、閉店が早い。午後9時を回ってから開いているのは、隣の焼き鳥屋の「ささや」と侘助の2軒しかない。
 都心で酒を飲んだものの、もう少し飲みたいと思ったり、なんか自宅にまっすぐ帰りたくない気分の時がたまにある。そんな場合、ふらっと気楽に立ち寄ることができる。黙って飲むもよし、顔見知りと話すもよし。すべてその時の気分次第だ。そんな自由が許される場所である。

住所 鎌倉市山ノ内1341
電話 0467−22−9508

▽常連客には作家の藤沢周さんも

 芥川賞作家の藤沢周さんをはじめとした北鎌倉や鎌倉在住の作家、詩人、アーチストも常連客となっている。店主は菅村りく郎さん。盛岡市出身だ。「2、3年のつもりだったのに、お店を始めていつの間にか15年経ってしまった」。根っからの自由人である。サラリーマン経験はないという。常連客の一人である詩人の城戸朱理さんとは、高校の先輩と後輩の間柄だ。
 4年前から北鎌倉駅から約10分の距離のある台峯という緑地をナショナル・トラストの手法によって保全する運動に参加している。仕事の経験を生かし、運動の拡大発展のために、私が中心になって「北鎌倉の風」というタイトルの機関誌を創刊した。

▽歌にもなった「北鎌倉の風」
 藤沢さんと城戸さんに、この機関誌に寄稿してもらったが、お二人に話を通してくれたのが菅村さんと前店主の甘道三郎さん(現在、「COFFEE SHOP」TARO'S店主、次回マイ・ショップで紹介予定)だ。転居して間もなかったので、私は藤沢さんと城戸さんのお二人とは面識がなかった。
 機関誌の「北鎌倉の風」という題名は、「侘助」で藤沢周さんに原稿をお願いした際に、生まれた。印刷版2000部、コピー版4000部発行した。予想を上回るインパクトがあった。何と「北鎌倉の風」という題名の歌までできてしまった。リラ研究グループ 自然音楽研究所の山波言太郎さんが作詞し、青木由有子さんが作曲した。

▽新しい自分が生まれた場所
 北鎌倉へ転居してくるまでは会社と自宅を往復するだけの、地域とは無縁の「根無し草」だった。侘助は「北鎌倉の風」が生まれた場所であると同時に、地域に生きる市民としての新しい自分自身が生まれた場所でもある。
 さらに言えば、これまでの人生でクリエーターの人たちとの付き合いはほとんどなかった。現在は、何人ものクリエーターの人たちと気軽に酒を酌み交わすことができるようになった。さまざまな刺激を受けている。侘助にあらためて感謝したい。

▽書くために生まれてきた―作家・藤沢周トークショーより―
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/5/s.html

▽【インタビュー】リラ自然音楽歌手、作詞、作曲家・青木由有子さん
歌うことで人は変われる
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/5/Q.html

▽伝言板
北鎌倉の風を見て、読み、歌う
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/9/dengon1.htm#%89%EF%95%F1

▽生まれ出る期待と怖れ―晏侶展―
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/2/2003/110.html

 

味のあるJR北鎌倉駅
侘助入口
侘助店内
母子像 (白雲庵で開催
された晏侶展出品作品。
侘助店内に置かれたもの
と同一作品)

【参考】
*総合学習を意識した「北鎌倉の風」第4号
 ことし3月に発刊した「北鎌倉の風」第4号は、総合学習を意識して編集した。
「命育む台峯にあそび、まなぶ」という特集を組み、この緑地の自然の素晴らしさと自然と人の暮らしのかかわりの歴史について触れてみた。
 編集後記には次のように書いた。参考までに要約を添付する。

◎願わくは総合学習の副教材に(要旨)
 私たちが保全しようとしている台峯緑地は、面積がわずか27ヘクタールしかない「小さな谷戸」である。しかし、この「小さな谷戸」にはかけがえのない多種多様な生きものが、育まれている。ある意味では「小さな宇宙」ともいっていいだろう。

 近代文明の目まぐるしい発展によって、私たちはともすれば季節感を喪失してしまった感がある。ところが台峯を訪れることによって「春・夏・秋・冬」という四季の移ろいを、驚くほぼ鮮明に感じ取ることができる。例えば寒風が肌を突き刺す2月。じっと目を凝らさなければ見逃してしまうほどひっそりと花開くウグイスカグラが、真っ先に谷戸の春の訪れを告げてくれる。 

 「小さな谷戸」は生き物たちを育む場所ではあるが、一方で熾烈な生存競争が繰り広げられる場所でもある。食物連鎖の頂点に立つ猛禽類の「タカ族」の行動を観察するとそれがよく分かる。ノスリの「狩り」は鋭い。100メートル以上の天空から、翼をたたみ、時速100キロもの超スピードで垂直に下降し、獲物をゲットする。「まるで弾丸のよう」。実際にその様を見た人は言う。
 北鎌倉台峯トラストのシンボルマークとなっているオオタカが出現すると、山の空気は一変する。生き物たちは一斉に身構え、ざわざわとした緊張が走る。命をかけた熾烈なドラマの幕開けである。後日、オオタカの餌食となったヤマバトの羽の散乱に、その痕跡がとどめられることになる。

 第4号は、台峯を歩く際のガイドブックの役割は、十分果たせると思う。さらにいうと欲張り過ぎかもしれないが、教育関係者の皆さんには、この機関誌を総合学習の副教材に活用していただければという淡い期待を持っている。例えそうならなくても、多くの方々が「北鎌倉の風」を手にして、実際に台峯を歩き、台峯の魅力に触れてさえいただければ、編集担当者としては望外の喜びである。

なお、「北鎌倉の風」第4号は500円で、k.koba@kamakuranet.ne.jp(「北鎌倉の景観を後世に伝える基金」小林事務局担当理事)へ連絡するか、あるいは下記へ出向くと手に入れることができる。
▽ユスラウメ
http://www.dejima21.com/yusuraume/index.html
▽ネスト
http://www3.tky.3web.ne.jp/~nest/
▽パタゴニア鎌倉
http://www.patagonia.com/japan/culture/store_kamakura.shtml



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