会席料理の好々亭は、赤トンネルが目印だ。
この赤トンネルは、JR北鎌倉駅の下りホーム近くの線路沿いにある。創業者に中国趣味があったという。赤トンネルの手前には黒塗りの板塀。近くには円覚寺がある。付近は緑が多く、日本的な情緒が漂う。
横浜から北鎌倉へ転居した当初、この「ミステリアス」な赤トンネルは、私の好奇心をいたく刺激した。
▽魅力的な庭園
元別荘だったが、それを料亭に作り替えたのだという。
「北鎌倉の静寂な谷戸に囲まれた1000坪の日本庭園の中で、四季の彩りの会席料理をご賞味下さい。入口のトンネルをくぐれば、別世界のような静けさです」とホームページで自己PRしているが、掛け値なしに庭園がすばらしい。
梅の花の咲く1月後半から2月がお勧めだ。庭園には白梅、紅梅が約50本植わっている。控えめな梅の花の香りに包まれながら、庭園を散策するととても気持ちがいい。この時期は、食事をしなくても庭園を自由に見学できる。粋な計らいである。
新緑の時期や秋もそれぞれに味わいがある。「2003年春の北鎌倉匠の市」で、「北鎌倉・春の八景巡り」が同時開催されたが、この庭園が休憩場所として提供された。
高尾信二社長自らが「北鎌倉・春の八景巡り」の一行を出迎えてくれた。高尾社長は「北鎌倉の商観光を考える会」の会長でもある。庭園でお茶とお菓子をいただいた。
谷戸を吹き抜ける緑風が、ほほに優しく、かつ柔らかだった。
「北鎌倉の商観光を考える会」
http://www.kitakama.gr.jp/
▽梅は紅梅から咲き始める
数年前、仲間と「好々亭」で懇親会をしたことがある。大雪が降った年だった。庭園には雪が解けずに残っていた。白い雪に紅梅が見事に映えた。白梅はまだ、完全には開花していなかった。「梅は雪の時期にまず紅梅から咲きます。雪解けが始まると白梅が紅梅を追い掛けるように咲きます」。日本を代表する盆栽作家の山田登美男さんの言葉が、その時、蘇ってきた。
日が落ちてくると私たちの話し声が、谷戸の闇の中に吸い込まれ、瞬間的に「無音」状態になった。しばらく間をおいて「これぞ日本」。感極まった参加者の一人が、思わず口にした。参加者全員が、満足気に北鎌倉を去っていった。ある者は後日、奥さんを伴って好々亭を再訪した。
料理の値段は「所場代込み」と考えれば、お値打ち感が出る。仲間との懇談や恋人との語らい、家族にとっての特別な日の食事会に適している。きっといい思い出をつくれるはずだ。
好々亭
http://www.koukoutei.co.jp/
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