【5】山は泣いている!
NPO法人・北鎌倉の景観を後世に伝える基金・会報「北鎌倉だより」NO.5掲載



鎌倉の緑の玄関口の姿が刻一刻と失われていきます
 台峯とともに鎌倉の緑の玄関口として多くの人々に安らぎを与えていた六国見山の麓の「台緑地」に、埋蔵文化財の調査を名目に四月末に重機が入りました。
 この緑地は私有地で、既に鎌倉市から宅地開発許可が下りていました。しかし、「北鎌倉の景観を後世に伝えたい」との思いで運動をスタートした私たちは、トラスト対象地である「台峯緑地」に勝るとも劣らないくらい「台緑地」が、北鎌倉の景観にとって大切なものであると考えてまいりました。
 1カ月後に鎌倉市から「『関係住民すべての納得を得られた後の着工』が当然望ましいと考えております。しかし、開発事業要項の手続きは、事業者の理解と協力の下に成り立っているため、この点は御理解下さい。『埋蔵文化財発掘調査』にかかわる樹木伐採については、調査を実施するに当っては、調査の必要な範囲について表土や障害物を除去していく必要があり、そのため、樹木の伐採・伐根を行うことも必要になります。これらの作業を機械力を用いて効率的に行っていくため、重機が配置されています」との回答が帰ってきました。
 私たちは事業者の「大本組」に対し、説明会の開催を要請し、開発計画の見直しを訴えると同時に、社長宛にも要望書を郵送しました。しかし、大本組は私たちの要望書に一切答えることなく、宅地開発工事の直接の被害を受ける「高野台自治会」との工事協定書が、未締結の状態で事実上の本工事に入りました。
 大本組の行為は、「市、市民及び事業者の相互の信頼、理解及び協力の下に、市民参画によって行われなければならない」をまちづくりの基本理念に掲げている「鎌倉市まちづくり条例」の精神に反するのではないかと考え、5月に鎌倉市都市計画課と鎌倉市長宛に質問書を提出しました。写真を見ていただければ分かりますように、「埋蔵文化財調査」は、名目で明らかに事実上の本工事です。“ゼネコン国家”日本の原型を見るような気がします。文化財とは?景観とは?企業の社会的な責任とは? 行政、市民の役割とは? 「台緑地」の宅地開発の現実はそういったことを問い掛けているような気がします。
台緑地の空洞化が進んでいる