【3】消滅の危機に晒された緑の玄関口
かまくら情報九九年秋号掲載

 通称、台緑地と呼ばれる緑地をご存知だろうか.ナショナル・トラストの対象となっている台峯緑地とはJR横須賀線を挟んでほぼ向かい合う位置になる。北鎌倉駅から見ると右に台緑地、左が台峯緑地だ。いずれも鎌倉の緑の玄関口的な存在だ。台緑地は面積こそ劣るが、北鎌倉の景観を構成するうえでの重要性は優るとも劣らない。「この緑地のおかげで空気がおいしい」と地元の人々は、大きく息を吸い込み表情を和ませる。

■ ダンプ3万台を投入
 ところが、この台緑地が、消滅の危機に晒されている。バブル崩壊で頓挫したと思われた「鎌倉台開発工事」(仮称)という宅地開発計画が、再浮上し、具体的に動いているからだ。計画では今年秋から二年半の歳月をかけ、尾根を削り、戸建住宅用に八三宅地を造成する。開発面積は三万四千平方メートル。カンセイは住宅地に隣接した緑地での宅地開発計画だけにさまざまな問題を内包している。
 問題点の一つは、工事によって近隣住民が被る被害だ。計画によれば宅地造成に伴って削り取られる土砂の量は約一四三万立方メートル。この土砂の搬出に必要なダンプカーは往復約三万台。工事期間中は、三分間弱に一台のダンプが往来する計算になる。大量の埃、騒音、振動が発生し、近隣住民を悩ますことになるだろう。
 被害は近隣住民にとどまらないはずだ。土砂を積んだダンプは、台緑地に隣接した住宅地の生活道路をつかって鎌倉街道(小袋谷─鎌倉女子大)に出る。鎌倉街道の交通渋滞は今でもひどい。そこへダンプの往来が加わればどうなるか。都市機能に重大な悪影響を与えることは火を見るより明らかだろう。

■ 環境を破壊し、まちづくりを阻害
 二つ目の問題点は、自然環境や北鎌倉の景観の破壊につながることだ。台緑地は住民の心に安らぎを与え、人間の営みによって発生する騒音を遮断し、熱風を冷却する。さらに空気の汚れも清浄化し、快適な重空間を提供している。この台緑地を含めた六国見山エリアは、神奈川県では希少となったふくろうの生息地となるなど、多数の野生生物の貴重な生存の場となっている。
 北鎌倉の景観の大きな特徴は、歴史的な遺産と緑の調和にある。鎌倉市は一九九六年に策定した「緑の基本計画」のなかで、台緑地をヒートアイランド化防止、安全な都市空間の形成、都市景観の形成などの観点から、「永続的に保存すべき緑地」としている。従って、この計画は自然環境を破壊するだけでなく、鎌倉市が目指すまちづくりを阻害するともいえる。

■ 外堀が埋められた開発計画
 これだけ重要な緑地なのになぜ、計画にストップがかけられないのか。理由は一九九三年に中西元市長が、事業者に開発許可を与えたからだ。激しい反対運動を展開していた亀井・善応寺の住民で構成する「自然と緑を守る会」もやむなく条件闘争に転じ、工事協定書と確認書を事業者と締結した。土砂の搬出口となる高野台自治会も、工事の直撃を受ける近隣四軒の同意を条件に、工事協定書・確認書を締結する方針だ。外堀を埋められた中で、孤立無援状態の近隣四軒が宅地開発の見直しを事業者に要求、首の皮一枚で着工に歯止めをかけている。しかし、近隣四軒の頑張りにも限度がある。貴重な台緑地を保全する為にどうすればいいか。多くの皆さんのお知恵をお借りしたい。