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  ネットワーク時代の地域経営
    〜地域が日本を変える時代がやってきた〜


 2月9日(土)の午後、私の母校の一橋大学のOB組織である中小企業診断士如水会の依頼で、上記のタイトルで講演をした。


 中小企業診断士如水会のホームページ(http://sindan.mercury.ne.jp )に過去の演題と講師のリストが掲載されているが、これまでの演題は日本経済・世界経済、企業経営に関するもので、講師も企業の経営陣、コンサルタント、大学教授だ。今回は異色のテーマだし、私が講師に呼ばれたこと自体に、時代が大きく変わったことを痛感する。講演では、以下の内容を話した。      
(1)きっかけはある一つの言葉
 ―ミイラ取りがミイラに―
(2)常識摩擦を乗り越える
 ―基本は人間関係―
(3)地域が日本を変える
 ―刺激的な異質者とのコラボレーション―
(4)キーワードは分散型市民運動
 ―統合ではなく提携―
(5)生涯一記者
 ―理想の地域メディアを追求―

 講演では、自ら命名し、自著の「北鎌倉発 ナショナル・トラストの風」の副題にした「分散型市民運動」について詳しく説明した。要はネットワーク時代にはそれに合った市民運動、さらに言えばライフスタイル、ビジネスモデルがあるはず。自立した個人、市民組織が横並びに足りないものを補い合えば、自らが望む目的が達成できるのではないかと強調した。
 実はこのホームページは私のコンテンツ面での協力を条件に「サラリーマンスタイル・ドット・コム(http://www.salaryman-style.com/)」との「―刺激的な異質者とのコラボレーション―」で更新されている。すべて、メールでのやり取りだ。ベースには、自己実現というか、自らが目標としている理想に対する相互の信頼関係がある。私は北鎌倉。「サラリーマンスタイル・ドット・コム」の拠点は長崎。すごい時代になった。

 この日の講演では、私が地域活動に参加するきっかけになった「ナショナル・トラスト」についても説明した。以下は参考まで。

「ナショナル・トラスト運動とは」 
 1895年、英国で弁護士のサー・ロバート・ハンター、社会事業家で婦人運動家のオクタビア・ヒル女史、牧師のハードウィック・ローンスリー氏の3人が話し合って、「ナショナル・トラスト」を組織した。ナショナルは「国家の」とか「国立の」ではなく、「国民の」という意味だ。国民のために国民自身の手で、価値ある美しい自然と歴史的建造物を寄贈、遺贈、買い取りなどで入手し、保護管理し、公開するという意味で「ナショナル」といっている。
 ナショナル・トラストの研究者によると、英国では産業革命とほぼ並行して農業革命が進行、大規模な土地のエンクロージャー(囲い込み運動)で、小農の開放農地や共同用地が囲い込まれていった。これに対し、上記の3氏は「相手が囲い込むなら、こちらも逆の意味で囲い込みをやろうという」と相手の論理を逆手に取り、自然や歴史的環境を保護する運動として「ナショナル・トラスト」を考え出した。
 現在、英国の「ナショナル・トラスト」の参加人員は256万人、 保護管理面積は27万ヘクタールに達する。これは大阪府とほぼ同じ面積で、英国では民間最大の土地所有機関となっている。
 日本のナショナル・トラスト第1号は「財団法人 鎌倉風致保存会」。1960年代半ば、鎌倉の鶴岡八幡宮の裏山にある御谷(おやつ)に、宅地造成計画が浮上したのをきっかけに誕生した。財団設立の中心人物の作家の大佛次郎氏は「過去に対する郷愁や未練によるものではなく、将来の日本の美意識と品位のため」と説明している。英国の「ナショナル・トラスト」が単一組織なのに対し、日本は各地に組織がある。「社団法人ナショナル・トラスト協会」に所属するトラストは、全国に50団体、会員1万4千人、保護面積3千ヘクタールに上っている。
 
「社団法人・日本ナショナル・トラスト協会」と「財団法人・日本ナショナルトラスト」 
 日本のナショナル・トラスト運動の中央組織はこの二つ。前者は市民団体の連絡組織で、所管は環境省。後者は私鉄が中心になって設立した。所管は国交省。
 社団法人・日本ナショナル・トラスト協会 
 社団法人日本ナショナル・トラスト協会は、環境庁からの認可を得て、1992年9月に設立されました。任意団体だった「ナショナル・トラストを進める全国の会」の設立趣旨・事業活動などを継承し、公益法人として新たな出発をしたのです。
 「全国の会」は、多くの人達にナショナル・トラスト運動への理解を深めていただき、運動を全国的に連絡・協力する組織として、1983年2月に結成されました。
 これまで毎年、全国大会を開催し、国内の運動団体のつながりを強める役割を果たしてきました。資産取得や寄付・寄贈の際の税制上の優遇措置の実現へ向けた活動に力を注いだり、とりわけ新しく活動を始めたナショナル・トラスト団体を積極的に支援し、日本のナショナル・トラスト運動の発展に寄与してきました。全国のナショナル・トラスト団体で買い取り、および保全契約を結んでいるナショナル・トラスト地の面積は約1800ヘクタールにも及んでおります。
 また近年は英国ナショナル・トラストとの共催事業としてワークキャンプを実施したり、ナショナル・トラスト国際シンポジウムを開催するなど国際的な交流も深めております。 (http://www.ntrust.or.jp/より)
 財団法人・日本ナショナルトラスト 
 財団法人日本ナショナルトラストは、国民的財産である美しい自然景観や貴重な文化財・歴史的環境を保全し、利活用しながら後世に継承していくことを目標に、英国の環境保護団体である「ザ・ナショナルトラスト」を範として1968年12月に設立された「特定公益増進法人(免税団体)」です。
 財団法人日本ナショナルトラストでは市民参加による保護対象の取得・修復・整備・公開などの保護活動を積極的に行っており、当財団への寄付は所得税や法人税などの控除を受けることが出来ます。また、土地などを寄贈された場合は相続税が非課税になるとともに譲渡所得税の優遇が受けられることもございます。 (http://www.national-trust.or.jp/より)

 

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