2005
vol5

 シリーズ・団塊世代よ、帰りなん、いざ故郷へ!
 第13回「講演:蓄積したノウハウには大きなニーズがある!」
―社会教育主事セミナー「地域社会へまず一歩」(主催:神奈川県教委)―


 神奈川県教育委員会が7月13日(水)、神奈川県生涯学習情報センターで開催した社会教育主事セミナー「地域社会へまず一歩」に、友人である「夢工房」の片桐務代表(自然塾丹沢ドン会専務理事)とともに講師として招かれた。
 このセミナーは神奈川県及び市町村社会教育主事、社会教育主事有資格者を対象に、「団塊世代が、今後、家庭や地域にかかわりたいと願った時に、社会教育・生涯学習の立場からどう支援できるかを考える」を目的に開かれた。教育主事約40人が出席した。

▽相次ぐ講演依頼
 私は「蓄積したノウハウには大きなニーズがある!―ただし、地域へは肩書きなしの人間で―」というタイトルで講演、講演後はグループ討議にも加わった。同じようなテーマで、立川市女性総合センター(10月1日・土 14:00〜16:00)、船橋市高根台公民館(11月26日・土 18:00〜19:30)からも講演の依頼が来ている。マニュアルとか先行モデルがないので、行政も「2007年問題」への対応で苦労しているようだ。
 北鎌倉湧水ネットワークの活動紹介では、NPOと企業のジョイントベンチャー北鎌倉湧水仕込み地ビール「北鎌倉の恵み」プロジェクトに関し、パワーポイントを使った。パワーポイントの使用は、6月18日、名古屋国際会議場・レセプションホールで開催された「第3回パートナーシップ大賞」の最終審査会でのプレゼンテーションに続き2回目。講演では初めてだ。写真が使えるので、活動内容を理解してもらいやすい。便利だ。

▽地域へは肩書きなしの人間で
 講演の中で「地域活動へ踏み出すための心構え」として、@地域へは肩書きなしの人間で入るA土俵が違えば、常識と考えていたことが非常識になってしまう「常識摩擦」と、説明したつもりでも、相手はまったく説明を聞いていないという「バカの壁」の存在を受け入れるB仕事を通じて培ってきたかけがえのないノウハウは、会社を離れた地域でも必要とされている」と強調した。
 また、行政の支援に関しては、民間の知恵を積極的に活用、協働事業方式が望ましいとし、「鎌倉市は1昨年、景観づくり賞を制定し、優れた活動をしている団体を表彰した。表彰式には景観づくり賞に応募した団代が、多数集まった。この席で、鎌倉市は各市民団体の交流の窓口となることを提案した。どういう事情か分らないが、市が交流の窓口になることは実現しなかった。でも、こういう試みはトライする価値がある」と指摘した。

▽ 地域の時間はゆるやか
 この際、北鎌倉湧水ネットワークのHPのサポートお願いしているサラリーマンスタイル・ドットコムの平野恵子代表の拙著「団塊世代よ、帰りなん、いざ故郷へ!―セカンドライフの一つの選択肢―」の書評が的を射ていたので、要旨を紹介した。中身は下記の通り。
□男のブック倶楽部□(http://www.salaryman-style.com/knowledge/book/book9.html
 ……経済記者としてバリバリ仕事をしてきた著者が、あるとき自己と自己の周辺を眺めて、生活者としての自分が根無し草のようだと感じたのは、数年前のこと。そのときから、彼なりのスタンスで地域に入っていくのだが、生活者として初心者マークの彼の活動や感動は、前作「北鎌倉発 ナショナル・トラストの風」に詳しく書かれている。
 前作から3年目、自分の暮らす北鎌倉という地域とのかかわりから変化した彼の考え方と生き方の方向性が、同じ団塊世代のサラリーマンに向けたメッセージとなっていく。「団塊世代よ、帰りなん、いざ故郷へ」というが、このタイトルを団塊世代への応援歌と受け取るのは甘い。
 故郷には故郷の事情がある。地域には地域の事情がある。それを理解せずに、社会の第一線を歩いてきた自分のスキルを故郷に、地域に活かしてやる!なんて意気込むと必ず失敗すると思う。
 そこには、社会で活躍してきたという驕りがあるからだ。小さいことだが、地域ボランティア活動ひとつ見ても、まずは、経験者の指示に従って身体を動かすことから初めて欲しいのに、新参者であっても男は組織を動かす位置に付こうとする。
 まずは、郷に入れば郷に従え。入り込んで信頼を獲得してから新しい展開を提案していくべきなのだ。地域の時間はビジネスの時間とはぜんぜん違ってゆるやかなのだ。せっかちでは信頼関係は結べない。
 野口氏は、日曜農夫をすることで地域のゆるやかな時間になじみ、周囲と声を掛け合い、わずらわしい申請や交渉ごとを買って出て、軽いフットワークで北鎌倉という地域のよさを守ることに献身してきている。そこが出発点で、今回の本のような、男の地域活動の一つの理想形にたどり着いたのだと思う……

▽「ギブ&テイク」ではなく「ギブ&ギブ」
 私は、「ギブ&テイク」ではなく「ギブ&ギブ」の気持ちが必要でしょうね、といって講演を結んだ。人間は自己評価と他者評価では、とんでもない違いがある。何かで読んだことがある。自己評価は常に、他者の評価に比べ、3割とか5割増しとか。自分に甘く、他人に厳しい。それが人間の本性だ。ましてや強制力のはたらかない、ボランティアの世界である。ボランティアの語源は「志願兵」なのだ。
 その上、「常識摩擦」と「バカの壁」の存在がある。「ギブ&ギブ」で、かろうじて帳尻が合うのではないか。だから、楽しむ気持ちがなければ、つらい。「ナンバーワン」ではなく、「オンリーワン」を目指せばいい。競争ではない。競争が当たり前だったのが団塊世代。それはもういいのではないか。

▽ 本来の姿に帰り総点検
 グループ討議では「自信を持って地域に還元するようなノウハウが、本当にあるのか」という質問が出された。私は「ノウハウは必ずある。経理の人なら会計を手伝ったり、NPOの法人化などで力を発揮するはずだし、営業の人なら組織の拡大の貴重な戦力になる。ただし、『地域へは肩書きなしの人間で入る』という意味を正確に理解する必要がある。
私は地域活動をする中で、自分本来の目標が、『生涯一記者』であることにあらためて気付かされた。大切に思うことを取材し、人に伝える。そういうことを考えて、新聞記者になった。自分の組織なら一瞬にして、何千万人の読者にニュースを伝えることができる。でも、日本のマスコミのシステムでは、一定の年齢になれば、現場を離れざるをえず、それができなくなる。地域活動で機関誌を発刊した。2千部だ。無名の市民が撮影した貴重な写真を掲載、記録に残すことができ、それが地域活動の目標達成に大きな役割を果たした。
何千万人と2千部では、数は全く違う。でも、本来の目標という点では同じ。こういう観点から、自分の培ってきたノウハウを総点検すれば、自ずと答えは出てくるはずだ」と回答した。

▽ 直接、話しが聞けて良かった!
 翌日、主催者から下記のメールが入った。
 野口様
 昨日は、お忙しい中、セミナーでのご発表をいただきありがとうございました。
参加者からも、ヒントが得られた、グループ協議で直接お話しが聞けて良かったとの声が多々ありました。団塊の世代についてのテーマで、どんなことができるのか、企画した私自身が不安でしたが、第1回、そして昨日とセミナーを開催してみてやってよかったと思えました。
 これも野口様はじめ講師としてお出でくださった方々のおかげと心から感謝申し上げます。ありがとうございました。これを機会に今後とも、どうぞよろしくお願いします。簡単ではありますが、お礼まで。(昨日は、片桐様とおいしいビールはお飲みになれましたか?地ビールの方がおいしいですよね。)

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