3月28日(日)に秦野市なでしこ会館で開催された第9回丹沢シンポジウム「自然を創る、自然を食べる」−週末のら人がつくる食の安全と地域再生−」(主催・NPO法人自然塾丹沢ドン会)に招かれて基調講演を行った。「団塊世代よ、帰りなん、いざ故郷へ!―食の安全と地域再生のイメージ―」というテーマで約40分間話したが、講演の柱は【農と癒し】【農と食の安全】【農と地域再生】の三つ。「日曜百姓」をしながら見えてきたこと、感じたことを話した。
今回の講演では、自らも含めて間もなく定年を迎える団塊の世代に焦点を当ててみた。それぞれが30年もの長きにわたって社会人として生きてきた。培ってきたさまざまなノウハウが必ずあるはずである。定年と同時に、お蔵入りさせてしまうとするならば、あまりにもったいない。こんな思いで、講演では次のように問題提起をした。
「地方から都会へ集団移住した団塊の世代は間もなく、一斉に退職します。職場を去った後、団塊の世代はどのような人生設計を持っているのでしょうか。時々考えます。もし、帰れる故郷があって、農業が好きなら、その故郷の特徴を生かした農業を展開し、再び故郷ににぎわいを取り戻すことも選択肢の一つとして考えてもいいのではないか。今や、ネットワーク時代です。実際に故郷に住まなくても、故郷と関わる方法はいくらでもあるはずです。志を同じくした者同士で、ネットワークを組もう。団塊世代よ、帰りなん、いざ故郷へ! これが団塊の世代へのメッセージです」
この日のシンポジウムのパネリストの一人に地元農業経営者の遠藤一生さんがおられた。聞けば遠藤さんは58歳。それなのに地区では最年少とのこと。やはり、丹沢地区でも私の故郷と同じように、農業の後継者不在が深刻なのだ。でも、遠藤さんのお話を伺って、少し希望が持てた。遠藤さんの話しに耳を傾けていたのは昔は主婦だけだった。しかし、最近は男性も耳を傾けるようになってきたという。それと丹沢ドン会中核が団塊の世代で、丹沢を第二の故郷と考え、耕作放棄された棚田の復元に汗を流しているという。嬉しい話だ。
「木文化再生友の会」設立宣言をした牛嶋保夫・工房「杢」代表も団塊の世代である。なにやら団塊の世代が、次の「居場所」を求めて、「もそもそ」と具体的な行動を始めたような気がする。シンポジウムの後の懇親会で、「各地で活動をしているグループに呼びかけて、『団塊サミット』を開催したらどうか」と提案したら、反応は上々だった。会場として北鎌倉の禅寺が借りられたら最高だ
今後、北鎌倉湧水ネットワークのHPで、シリーズで故郷や地域再生に向けて、具体的な活動をしている個人やグループを取り上げるつもりだ。情報があればメールで連絡していただければ、ありがたい。なお、私の講演及びシンポジウムの詳しい内容は後日、丹沢ドン会がブックレットとして出版する予定になっている。
○第9回丹沢シンポジウム・基調講演骨子
【プロローグ】
縁は不思議です。私が今、お話するというのもまさに縁そのものといえると思います。丹沢、そして町田先生、片桐さんとの出会いがなかったら本日、私がこの場にいることはありません。
【農と癒し】
・スタートは市民農園
・小作人の悲哀
・ 園芸療法の効果を体感
・「命をいただきます」
・中学時代は不登校の生徒
・植物が元気を与えてくれた
・森の癒し効果 医学的に解明へ
【農と食の安全】
・日曜百姓」は有機、無農薬で
・季節に逆らわない
・ベトナムの闇「枯れ葉作戦」
・公害の原点「水俣病」
・少年が切れやすいのも食に関係
・食は寿命にも影響
・もっと御飯を食べよう
・欲望の限りなき追求とグローバル化
・少しだけ減らすことを考える
【農と地域再生】
・間もなく定年
・忘れられない光景
・特撰・橘ブランド
・地ビール「北鎌倉の恵み」
・全国地ビール鑑評会で銀賞受賞
・ビジネスモデルをつくり甥夫婦につなぐ
・田舎へは一人でどうぞ
・瞑想と同じように、魂を解放させてくれる
【エピローグ】
最後にドイツの詩人で小説家のヘルマン・ヘッセの言葉を紹介して本日の講演を終わりたいと思います。「土と植物を相手にする仕事は、瞑想するのと同じように、魂を解放させてくれるのです」。ヘルマン・ヘッセは庭仕事が大好きでした。土は神秘的です。そして精神的です。今、「農」を見直すことは、地域コミュニティの再生、いやそれにとどまらず日本再生の手がかりを与えてくれるような気がしてなりません。
(了)
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