2003
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    インターネットが果たす地域メディアの役割
 ―シンポジウム「市民メディアはヨコハマを変える!」に招かれて―

 2月23日(日)に開催された<第1回公開シンポジウム>「市民メディアはヨコハマを変える!」(主催:横浜市民メディア連絡会 http://www.y-cmc.com/ 場所:横浜市大アーバンカレッジ)のパネラーとして招かれた。
その結果を報告したい。

 ゆめおおおかオフィスタワー17階の会場には、一般市民、学生、市民運動の実践者、マスメディア、行政、大学関係者73人が参加した。私はパネリストの巻頭発言と参加者との質疑応答の中で、自らの実践例を交えながら、インターネットが果たす地域メディアの役割と今後の可能性を中心に話した。

 私はインターネットの出現を、活字と電波と電子の三つのメディアの競合時代の到来だというとらえ方をしている。活字が王様の時代があって、次に活字と電波の共存時代が続いた。そして、今電子という革命的な機能を持ったメディアが現れた。

 この日のシンポジウムでは、個人の生活や社会を良くするために、三つのメディアをどのように位置付け、有効活用していくかについての具体的な方向性は示されなかった。でも、ここから何かが生まれていく―。そんな予感がした。その理由は、同質の世界の交わりの中からは、新しいものは生まれないし、異質な世界が交わることによって、新しいものが生まれると考えるからだ。一般市民、学生、市民運動の実践者、マスメディア、行政、大学関係者という異質者が、一堂に会し、ネットワーク時代の到来を現実のものとして受け止め、真剣に議論を戦わした意味は大きい。

【発言要旨】
▽私の情報発信の原点

(1)現在はデスクワークをしているが、私は現場が好き。人の話を聞いて書いて伝える。生涯一記者が目標だ。しかし、日本のマスメディアのシステムではそれができない。「人の話を聞いて書いて伝える」場所を求めていた。

(2)地域では全くの根無し草だったが、北鎌倉に転居してから、ひょんなことからナショナル・トラスト運動やまちづくり運動といった市民運動にかかわるようになった。立場を変えて市民運動をしてみると継続的に取り上げてくるメディアがあればいいと切実に思った。
 マスメディアの世界に30年もいるからニュースは相対的であることがよく分かる。取り上げてくれるかどうかは、その日のニュースの発生次第。より読者が関心を示すと思われるニュースが発生するとボツになる。それとマスメディア(新聞、テレビ、雑誌)は一過性。 手伝っているトラスト団体で機関誌、会報、インターネットを立ち上げた。分社化の発想で北鎌倉湧水ネットワークのHPを立ち上げた。
コンセプトはネット版地域ミニコミの実験。質の高いというか、ポリシーを崩さないWeb版ミニコミ誌を目標にしている。活字大好き人間だから本も出版した。インターネットはものすごい可能性を秘めている。しかし、個人や市民団体が本来の目標を達成するためには、さまざまなメディアが持っている特徴を理解し、有効活用することが大事だ。

▽インターネットの特徴
 1 個が初めてマスに発信できるようになった。この機能はマスメディアの独壇場だった。北鎌倉湧水ネットワークのHPに「スクープ!伐採した樹木を違法処理の疑いが」を掲載し、行政とやりとりをした。HPに掲載しなかったら行政は、相手にしなかったはず。しかし、たいした数ではないが、月1000件のアクセスがものをいったと思う。1995年に初めてインターネット体験をした。場所は次男が通っていた慶応大の藤沢キャンパス。学生がパソコンの前で、エレクトーンのような楽器を演奏していた。次男が説明した。「彼は自分の作曲した曲をHPにアップしている。世界を相手にコンサートをやっているのと同じ」。とんでもない情報の流通ルートが出現したと考えた。

 2 スピード リアルタイムでいける。自分でアップする技術があれば今の瞬間をアップできる。今晩中に、このシンポジウムの内容を北鎌倉湧水ネットワークのHPに掲載するつもり。新聞の朝刊より早い。もし、テレビに放映されるとするならば、スピードではテレビに負ける。しかし、テレビには放映時間帯の制約がある。ただし、私は超アナログ人間で、メカ音痴。記事はメールでサラリーマンスタイル・ドット・コムhttp://www.salaryman-style.com/に送り、アップしてもらう。このお礼代わりにサラリーマンスタイル・ドット・コムにはコラムを寄せている。ネットワーク時代だから可能。でも「物々交換」というのがアナログ的、情緒の世界で面白いと思っている。

 3 安価 カラー写真動画、音声も自由に使える。 

 4 双方向  生の反響がある。国立マンション訴訟に関し、記事と写真を掲載、後日、返信集を掲載した。
 
 5 データベースの機能を備えている。バックナンバー。
 
 6 字数制限がない。紙面の制約の中で仕事をしていたから、好きな量だけ書ける。快感に近い。
 
 7 ネットワークを組むことによって、相乗効果が期待できる。

【参考】
*シンポジウムは以下の手順で進行した。

▽基調提案 「横浜市民メディア連絡会が目指すもの」

▽パネルデスカッション「市民メディアは新しい社会を創れるか?」
パネリスト:
○野口 稔(共同通信メディア局編集部次長、北鎌倉湧水ネットワーク代表)
○杉浦裕樹さん(横浜市市民活動共同オフィス・協働のあり方研究会情報サポートチームリーダー、クリエイテイブサポート代表)
○石田 正さん(横浜テレビ局取締役)
○川浦康至さん(横浜市立大学国際文化学部教授、メディアとコミュニケーションなどを研究)
 コーディネータ:原 聡一郎(横浜市民メディア連絡会事務局長)

▽会場討論「市民メディアがコミュニティを変える!」

*シンポジウムには以下のように行政、大学、マスメディア、NPO団体などが後援者に名を列ねた。事務局の皆さんの努力のたまものだと思うが、この意味については、少し時間をかけて分析してみたい。
●後 援
横浜市立大学「地域と大学」研究グループ
協働のありかた研究会情報分科会
横浜市教育委員会
横浜丘の手市民活動ITサポートプロジェクト(TaKMi)
神奈川情報ボランティアネットワーク
神奈川県視覚障害者情報・雇用・福祉ネットワーク(View−Net神奈川)
横浜都筑・港北ニュータウンメーリングリスト
横浜青葉・田園都市メーリングリスト
クリエイティブサポート横浜
神奈川区エコマネー研究会
横浜市社会福祉協議会
横浜市港北区社会福祉協議会
(財)横浜市在宅障害者援護協会
NPO法人全国eタウンフォーラム
神奈川新聞
テレビ神奈川
FMヨコハマ
ラジオ日本
(株)横浜テレビ局
イッツ・コミュニケーションズ
「丘の横浜」メールニュース
毎日新聞横浜支局
産経新聞横浜総局
東京新聞横浜支局
NHK横浜放送局
情報誌ぱど



                                                   (了)

 

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