2003
1

  国立マンション訴訟で景観権初認定 景観保全運動に大きな励み

 北鎌倉の景観保全の必要性をこのHPで訴えてきたが、2002年12月18日の国立マンション訴訟の判決は、非常に大きな励みとなった。
東京地裁が「大学通りは、住民が土地利用の犠牲を払いながら七十年以上もの長期にわたって良好な景観を保ってきた歴史があり、大学通り沿いに建設された高層マンションは住民の景観の利益を侵害する」として、大学通りに面した東側の一棟の二十メートルを超える部分の撤去と、沿道二十メートル以内に住む住民三人に対する一人月額一万円と弁護士費用計九百万円の支払いを命じたからだ。
 この東京地裁判決は、これまで確立していなかった「景観権」という新しい権利に明確に法的保護を与える画期的なものだ。

▽日本で一番美しい大通り
 東京都国立市の「大学通り」は、作家の山口瞳さんが「日本で一番美しい大通り」と評したが、掛け値なしに美しい通りだと思う。春はサクラ、秋はイチョウの紅葉が彩りを添える。実は、私は個人的にこの通りとかかわりがある。母校が一橋大学なのだ。
 高校時代、同級生数人と志望大学を決める参考にしようと上京し、いくつかの大学のキャンパスを見て回った。国立駅に降りたとき、まっすぐ続く大学通りに感激した。そして、武蔵野の面影が残る一橋大学のキャンパスも印象に残った。このことが大学の志望動機に大きな位置を占めたことは、間違いない。
【参考】
写真特集 友よ、あの時君は若かった(一橋大学卒業30周年記念同窓会)
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/5/N.html

▽根拠は生存権と幸福追求権
 これまで、六国見山の宅地開発問題からスタートして小泉邸や圓(まどか)荘の取り壊しという具体例をあげながら北鎌倉の景観保全について、自分の意見を述べてきた(「北鎌の森から」と「マイ・オピニオン」のバックナンバー参照)。「小津安二郎は眠れない」ではこう書いた。「今回は中間的な総括をしてみたい。結論的にいうと、景観を保全するための新たな法律や、それを担保する固定資産税や相続税の改正が求められているように思う。今回の開発を間近に見ていると、景観や自然という目に見えるものが、単に消えてなくなるということだけでなく、日本が今後、拠り所にしなければいけない精神的なものまで、失わていくような気がしてならない。新しい世紀になっても、依然日本は混迷状態から脱しきれないでいるが、それは精神的なバックボーンの不在が、理由の一つになっているのではないか。」

小津安二郎は眠れない
http://member.nifty.ne.jp/Kitakama/2/0261/1.html

 しかし、今回の判決で、あえて法律をつくらなくても裁判所の判断で、景観が保全できる可能性があるということを知った。
新鮮な驚きだ。共同通信社が12月18日配信した記事では、今回の判決の根拠を次のように解説していた。

 ▽景観権
 憲法25条(生存権)、13条(幸福追求権)を根拠に、人間生活にかかわる良好な環境を享受する権利を「環境権」といい、これによって保護されるべき自然環境には景観も含まれるとして「景観権」が主張されている。しかし法的権利としては確立していない。
 国立マンション訴訟は、今後舞台を高裁に移す。逆転判決も十分考えられる。
しかし、一般的に頭が固いと思われている裁判官の中にも、景観権に理解を示してくれる人がいるということが分かった。今回の判決を素直に評価したい。(了)

 


日本で一番美しい大通り


場違いな問題の高層マンション
もどる