北鎌の森から
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失われゆく森への鎮魂歌   生活道路がダンプ銀座に  2001.8.1
 地球温暖化防止に向けた京都議定書問題が、ジェノバ・サミットで討議されているとのニュースが大々的に報道された7月22日、円覚寺裏の六国見山の宅地開発計画にゴーサインが出た。北鎌倉台土地区画整理組合の総会で、69宅地を造成する事業計画が、賛成多数で了承されたのだ。計画予定地は畑や山林で、段差があるため、盛り土が必要となる。5トンダンプ8000台(往復1万6000台)分の土砂が、外部から搬入される予定だ。周辺住民の日々の生活や環境、景観への影響が懸念される。
 六国見山の宅地開発は、上記の開発だけにとどまらない。マイ・オピニオンのコーナーの「消滅の危機に晒された緑の玄関口」「山は泣いている」で触れた台緑地の宅地開発計画が今年4月、埋蔵文化財の発掘調査を名目に、工事の直接の被害を受ける高野台自治会との工事協定書が、締結されないまま、見切り発車的に事実上の本工事入りした。北鎌倉台土地区画整理組合の開発予定地とは、わずか数十メートルしか離れていない。
 台緑地の宅地開発では、宅地を造成するために山を削り取る。この際、生ずる土砂を運ぶのに10トンダンプが往復で、約3万台も投入される。二つの宅地開発に使われるダンプが通行できる道路は、高野台住民が日常生活で使用している6メートル道路一本のみ。これまでは車の往来が少なかった生活道路が、ダンプがひっきりなしに爆走するダンプ銀座に“変身”する。

▲無惨になぎ倒された台緑地の樹木 2001.7月
 今年の夏はことのほか暑い。7月24日は、静岡県佐久間町で、40.2度まで上昇するなど、全国各地で7月としては、観測史上最高の暑さとなった。この日の夜は、クーラーなしに眠りに就くことは、非常に難しかったはずだ。しかし、六国見山の中腹にある私の自宅では、クーラーを使う必要はなかった。窓をあけると涼しい風が入り込み、快眠できたのだ。緑のお陰である。六国見山の緑地が宅地化されれば、湧水の出方にも、何らかの影響を与えるだろう。
 宅地化される緑地は、私有地である。所有者の権利は、認められなければならない。しかし、台緑地は北鎌倉の景観にとって、欠かせないものであり、多くの人々の心に安らぎを与えてきたし、宅地開発は周辺の住民に多大な犠牲を強いる。私有地だから好き勝手にやっていいというものでもないだろう。事業者で岡山に本社がある大本組は、高野台住民への工事説明会で「いい街づくりのお手伝いをしたい」「当社の財務内容は、経済専門誌でランキングトップになった」と胸を張った。住民感情を逆なでする、無神経な発言だと思う。
 世界的なベストセラー「道は開ける」(D・カーネギー著)に、世界最大の独占企業スタンダード石油会社を創設したジョン・D・ロックフェラーにまつわるエピソードが紹介されている。かつては金の亡者だったロックフェラーが、「ロックフェラー財団」を設立し、莫大な富を世の中のために使うことによって、逆に自らが救われていくという話だ。企業が利益を追求するのは、当然のことだが、大本組には、社会との調和を図りながら、企業の利益を追求する道を選択してほしい。何百年、何千年という時が刻まれて、今存在している台緑地は、大本組が削り取ったら、二度と復元できないのだから。

※著書の案内
 野口 稔・北鎌倉湧水ネットワーク代表が書いた「北鎌倉発 ナショナルトラストの風 分散型市民運動の時代がやって来た!」が、7月7日出版されました。詳しい内容は「マイ・ブック」を御覧下さい。




フォト特集 北鎌倉の夏
 かつて、伊豆、武蔵、相模など六つの国が望めた六国見山。今でも空気が済んでいれば、富士山が鮮明に目に入る。材木座海岸では、若者たちが、ウインドサーフィンに興じている。
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